「第1回 マリオネットに親しむ会」を、おかげさまで盛況のうちに開催することができました。記念すべき第1回の集まりのご報告を兼ねて、その内容をご紹介することにいたします。
20代から50代まで、さまざまな職業の男女12名にご参加いただきました。
「マリオネットを動かすことの面白さ、楽しさを皆さんと共有するための場にできれば」と企画した「親しむ会」ですが、果たして参加してくださる方がどれだけいらっしゃるのか? 正直、不安なところもあったのです。しかし、結果的には、次回に回っていただくお客様が何名も出るほど、たくさんのお申し込みをいただけました。
そんな中から、お二人だけ、参加申し込みのメールをご紹介させていただきます。
「一人で動かしていると ”こんな感じ”で済ませてしまうので他の方に見てもらったり、見せていただくことができる機会はとてもありがたいと思います。」(Sさん。30代女性)
「うちのフルヴィーネクは買ってから、ずーっとカーテンレールに吊るされていて、気が向いたときに茶の間の周りを歩かされるぐらいで、可哀想な日々を送らされております。私もつい最近、大きな鏡を買ったのをきっかけに、この子の運動不足を解消させてあげたいと、そう思い立っていたところでしたので、「マリオネットに親しむ会」の案内は、まさに「渡りに舟」でした(^_^)」(Hさん。30代男性。)
人形がいちばん魅力的に見えるしぐさを探る!
さて、いよいよ「親しむ会」のはじまりです。
参加者の皆さんの簡単な自己紹介のあと、さっそく人形を動かしていただくことにします。
最初の課題は、「自分の人形がいちばん魅力的に見えるしぐさを探る」。
まずは、二人ひと組で、6つの組に分かれていただきました。そのうえで、ギャラリーに用意した6枚の鏡の前で、持参したマリオネットを15分ほど動かして、魅力的なしぐさを探る。そして、みなさんの前で発表していただくという趣向です。
「発表時間は、30秒以内。ほんのちょっとしたしぐさでもけっこうです。」
こうお話したのですが、みなさん「30秒以内」という言葉の印象が強かったのか、比較的長めの熱演が多く、マリオネタス2003を持参した3人の方だけに限っても、「いろっぽく座る」、「床の雑巾がけ」、そしてなんと「貞子(映画『リング』)がテレビから出てくる」シーンと、考えてもみなかったようなしぐさの続出で、大いに盛り上がりました。もっとも、発表の後の本人解説を聞いて、ようやくしぐさの意味がわかり、大爆笑という場面も多々ありましたが・・・。
プライベートに楽しむ場合は、はじめに人形ありきです。脚本があって、ストーリーやセリフの決められているようなお芝居で人形を動かすのと違って、自分の人形の魅力をどれだけ引き出せるかに、どれだけ楽しめるかがかかっているのだと思います。そのためには、鏡の前で人形をいろいろと動かしてみて、その人形が魅力的に見えるしぐさを探すことが手始めです。魅力的なしぐさを見つけたら、そのしぐさを再現してみる。そして、なぜそのしぐさが魅力的なのかを考えてみる。
たとえば、腕を持ち上げるしぐさ一つとっても、ただ漠然と腕を上げるのと、上がっていく腕を人形に目で追わせるのとでは、受ける印象はずいぶん違います。
あるいは、ひと口に歩くと言っても、いろいろな歩き方があります。忍び足で歩く/ゆっくり歩く / 普通に歩く / 早足で歩く / スキップするように歩く。自分の人形が魅力的に見えるのは、どんな歩き方をしたときなのか?
そんなひとつひとつのしぐさの中から、自分の人形が魅力的に見えるしぐさを見つけて、ほかの参加者の前で再現してみる。その際、言葉で説明せずに、そのしぐさの魅力が観ている人に伝わるかどうかがポイントです。
マリオネットは、しぐさでしか表現できない!
どうして、こんなにマリオネットの「しぐさ」にこだわるのか? 理由はとても簡単です。
「悲しそうにしてみて」あるいは、「楽しそうにしてみて」と言われたとき、人間であれば、顔の表情を変えるだけで、それらしく見えます。でも、表情を変えることのできない人形は、しぐさで表現するしかありません。おまけに、人形は、自分のしぐさや動きを補足説明する言葉もしゃべれません。ストーリーやセリフは、人形の動きだけではどうしても表現できないときのためにとっておいて、まずは、徹底してマリオネットの動きにこだわってみたいと思うのです。 というわけで、いよいよ「マリオネットに親しむ会」のメインイベント(二つ目の課題)に突入します。
ジェスチャーゲーム。
40代半ば以上の方には、懐かしい名前だと思います。1953年から15年間続いたNHKの人気テレビ番組『ジェスチャー』で行われていたような、例の身振り手振りのしぐさだけで、何をしているところか相手に伝えるゲームです。
もちろん、人間がやるわけではありません。マリオネットにひとつながりのしぐさをさせて、それが何をしているところなのか、観ている人に当ててもらう。人形にさせるしぐさのお題は、参加者が自分で考えます。人形それぞれにできる動作やできない動作は違うし、魅力的に見えるしぐさも違う。そうした人形それぞれのキャラクターや動きの特徴を良く把握することが、その人形に相応しいお題を考える第一歩だからです。自分が考えたしぐさの意味やシチュエーションが、観ている人にきちんと伝わるかどうかが最大のポイントです。
発表時間は30秒以内、二人一組でもOK。準備時間は20分。
課題をお話した途端、参加者の方々の間に、ちょっと緊張した空気が流れました。それからの20分、みなさんそれはもう真剣な表情で、自分のマリオネットと格闘しておられました。
ヤンヤの拍手喝采。
そして、いよいよ発表です。
みなさんの発表した内容をお伝えしてしまっては、これから参加される方々の考える楽しみを奪ってしまうことになるやもしれません。ここは、お一人だけ、皆さんに絶賛された I さん(20代男性)の発表だけを動画でご紹介することにいたします。
いかがでしょう? これなら誰が見ても100%確実に伝わるしぐさだと思いませんか?
I さんだけではありません。ほかにも、私の想像をはるかに超えた、すばらしいアイデアがたくさんありました。マリオネットで表現することの難しさと面白さを、みなさんとともに感じることができた2時間は、私自身にとっても、とても幸せなひと時でした。次回は、どんなアイデアが飛び出すのか? とても楽しみです。
参加者の感想
翌日、参加者のお一人から、こんなメールをいただきました。
「マリオネットに対して同じ思いの方が集まると楽しいものですね。皆さんいい顔をされて、操っておられました。たくさんアドバイスをいただきましたが、ゆっくりとローズ(人形の名前)の良さを引き出せるような、「技」を発見していきたいと思いました。他の皆様に刺激されて、私なりに本気になって二つのテーマに取り組みました。自分ひとりでは、なかなか、ああは出来ません。ありがとうございました。」(Aさん。30代女性)
参加者の皆様、こちらこそ、ありがとうございました。はじめたばかりの試みですが、舞台とはまた違う、プライベートなマリオネットの楽しみをどんなふうに拡げていけるのか、皆さんとともに、これからも探っていきたいと思っております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
(Puppet House店主 深沢拓朗)
2月にはじまったマリオネットに親しむ会も、早いもので、10月15日の会で8回を数えました。この間、参加者の方々のご意見なども伺いつつ、少しずつチャレンジする課題?を変更したりしています。
◆1.ムリなく順を追って楽しめるように、課題を三つに増やしました。
第1課題-魅力的な固定ポーズを三つ披露する(準備時間5分)
固定ポーズですから、写真を撮るのといっしょで、自分のマリオネットが魅力的に見えるポーズ(静止した状態)を、参加者の前で三つ披露していただきます。ポーズが決まるまでの間、見ている側は、目をつぶって待ちます。目を開いたときに、人形がいったいどんなポーズをとっているのか? これはけっこう意外性があって、楽しめます。
第2課題-15秒以内で魅力的なしぐさを披露する(準備時間10分)
第1課題は、完成したポーズだけを見せるものでしたが、第2課題は、魅力的なポーズにいたるまでの過程も含めて見せるのがテーマです。短い動きやしぐさ、ひとつでも、二つでもけっこうですから、マリオネットの動きの魅力を発見していただきたいと思います。
第3課題-30秒以内で、ジェスチャーゲーム、もしくは、マリオネットの魅力的な動きを披露する(準備時間20分)
「何をしているところか当てる」ジェスチャーゲームだけに限定してしまうと、どうしても説明的な動きが多くなってしまいがちですので、マリオネットの魅力的な動きを探るという原点に立ち返って、特定の意味を持った動きやしぐさでなくとも、マリオネットが魅力的に見える連続した動きを披露するのでもOKということにしました。
第3課題発表のパフォーマンス動画ご紹介。 |
◆2.ビデオで撮影した発表を見ながら、動きのポイントをみなさんと考える。
第2課題、第3課題は、DVDビデオに録画しますので、発表の後、自分のマリオネットの動きを映像で確認しながら、どんなふうに動かしたら、より魅力的に見えるのか、参加者のみなさんといっしょに考えています。
◆3.「親しむ会」の後のお楽しみ?
「親しむ会」が終わった後、時間の許す方だけ残って、海外のマリオネット芝居のビデオを見たりすることもあります。その後、有志で近くの居酒屋で一杯飲みながら、マリオネット談義に花を咲かせるのが、すっかり恒例になってしまいました。
マリオネットを購入したその日に「親しむ会」に参加する方々もいらっしゃるぐらいですから、マリオネットを動かす技術はもちろん、性別、年齢、職業も、さまざま方たちに楽しんでいただける場にできればと思っております。どうぞお気軽にご参加ください。